《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
まだまだ甘えて欲しいから
「ママー、具合いだいじょーぶ?」

 妊娠が分かってから約一週間、今日は大晦日。本来ならばおせち料理をお祖母さんとお義母さんの三人で作る予定だったのだけど、少しずつ体調に影響が出始めてしまったせいでおせち作りは大丈夫だと断られてしまい、出掛ける予定が無くなってしまった私はソファーの上に横になりながら掃除や洗濯といった家事をこなしてくれている百瀬くんを時折眺めていると、つい今しがたまで百瀬くんの手伝いをしていたはずの神楽が私の元へやって来た。

「うん、今日は調子良いんだけど、パパから横になって待っててって言われただけだから、大丈夫だよ」

 今日は比較的調子が良くて、おせち作りが無いならせめて家事は私がやろうと思っていたのだけど、心配性な百瀬くんによってそれを却下され、無理せず横になっているように言われて今に至る。

「神楽はパパのお手伝いしてたんじゃないの?」
「パパがね、ママのそばにいてって言ったから」
「そうなんだ? それじゃあ、ママと絵本でも読もっか?」
「オレがママと赤ちゃんによんであげる! まってて!」

 百瀬くんに私の傍に居るよう言われたらしい神楽は自分が私とお腹の中の赤ちゃんに絵本を読むと言って張り切りながら部屋へ向かって行った。

「どれがいい?」

 そして、部屋から絵本を数冊持って来た神楽はソファーの上に広げながら、どれを読むか聞いてくる。

「神楽の好きな絵本をママと赤ちゃんに読んで聞かせて?」
「うん!」

 私の返しに笑顔で返事をした神楽は、お気に入りの絵本を手に取ると、いつも私や百瀬くんがやっているように絵本を広げ、読み聞かせを始めてくれた。
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