《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
 夕方、散歩も兼ねてすぐ近所のスーパーへ買い物へ出掛けた私たち。

 本来ならば神楽の安全の為に手を繋いで歩くのだけど、神楽は「オレがママを守るから、ちゃんと手つないでね!」なんて言いながら率先して手を繋いでくれる。

 こういう頼もしいところは百瀬くん譲りなのかなと微笑ましい気持ちになる。

「神楽は本当、頼りになるな」
「パパも、ちゃんとママと手つないでね! オレとパパでママと赤ちゃんを守るんだから!」
「そうだな、その通りだな」

 左手を神楽が、右手を百瀬くんが繋いでくれたのだけど、傍から見ると少しおかしい並びに見えるだろうなと思う。普通は神楽を真ん中に手を繋ぐだろうから。

 それでも神楽なりに一生懸命考えてくれての行動だから、私も百瀬くんも口を挟む事はしない。

 甘えてはくれないけど日々成長は感じられるから、それだけでも十分幸せだなと思った。


 その夜、年越しを起きてしたかったらしい神楽だけど、昼間も寝ていなかったから眠くなってしまったようで結局いつもと変わらない時間に就寝した。

 私は百瀬くんと共にテレビを観ながら年越しまでの時間をまったり過ごしていたのだけど、後数分で年越しという頃、寝室から「ママ」と呼んでいる声が聞こえてきた。

「珍しいな、神楽がぐずるなんて。寝惚けてるのかな?」
「本当だね。具合でも悪いのかな?」

 普段は途中で目を覚ましても呼ばれたりはしないから、もしかしたら具合が悪いのかもと気になり、私は百瀬くんと寝室へ急いだ。

 寝室のドアを開けると、身体を起こしてベッドの上に座った神楽が「ママ……」と手を伸ばして私を求めて来たので、

「どうしたの? どこか痛いの?」

 そう問いかけながらベッドに腰掛けて神楽を抱き締めた。
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