《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
 百瀬くんが神楽とお風呂に入っている間に百瀬くんの夕御飯の準備を進めていると、キッチンカウンターの一角で充電していた百瀬くんのスマホから通知音が聞こえてくる。

 それはメッセージアプリのもので、その後も何度か通知音が聞こえてきた。

 思えばここ最近、頻繁に誰かからメッセージが来ている印象だった。

 勿論、仕事の事でのやり取りも多いだろうから仕方ないのかもしれないけれど、先程の手作りのお菓子の事があるからなのか、変に勘繰ってしまう。

 暫くして、お風呂から上がってきた二人。

 神楽に麦茶を渡して水分補給をさせていると、メッセージが来ている事に気付いた百瀬くんは充電していたスマホを手に取って確認する。

 その様子をチラリと横目で見ていると、メッセージを確認した百瀬くんの表情がどこか焦っているような、戸惑っているようにも見えた。

(誰からなんだろ……)

 気になるけど、聞けない。

 百瀬くんは聞けば教えてくれると思うけど、もし万が一隠されたらと思うと聞く勇気が無かった。

 それから食事をとっている百瀬くんとタブレットでゲームをしている神楽に明日の昼間は百瀬くんの実家に行くように伝えると、神楽は私が行かない事に不満を示す。

「どーしてママはいかないの?」
「ごめんね、ママはちょっと用事があるから行けないの。今回はパパと二人で行ってね」
「だけど……」
「おばあちゃんは神楽が来るのを楽しみにしてるのよ? 行かなかったら悲しむよ? ね?」
「……うん、分かった」

 詳しい内容には触れずに「用事がある」とだけ伝えると、渋々ながら納得してくれた神楽はなんとか「行く」と首を縦に振ってくれた。

 百瀬くんは何故私が一緒に行かないのか何となく察してくれているようなのであえて説明はしなかった。

 その後、なかなか眠れなかった神楽に付き添っていたらいつの間にか眠ってしまい、日付が変わる少し前に目覚めた私は神楽の部屋を出てリビングへ戻るも、百瀬くんの姿が見えない。

 もう眠ってしまったのかと思い寝室を覗いてみるけどそこにも姿は無くて、ふと仕事部屋にしている書斎の明かりが点いている事に気付いた私がそちらへ近づくと、誰かと電話をしている最中だった。

 時間も時間だし、やっぱり少し気になってしまう。

 モヤモヤが募る中でひとまず寝る支度を整えながら百瀬くんの電話が終わるのをリビングで待っていた。
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