《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
「実はその取り引きの社長――永瀬さんって言うんだけど、永瀬さんのところは運が良いのか奥さんの方も当選したって聞いてさ、二回行くのもいいけど、行きたい人がいるなら譲ってもいいって話を聞いて、チケットを譲って貰う為に永瀬さんの出した条件を飲む事にしたんだよ」
「条件?」
「永瀬さんに囲碁で勝つ事。しかもチャンスは一度きり。彼、囲碁好きで有名な人なんだけど、好きなだけあってとにかく強いらしくてさ……俺は囲碁そこまで得意じゃ無いから、永瀬さんに勝つ為に知り合いの囲碁が得意な人に頼んで、リモートだったり直接会ったりしてアドバイスを受けながら特訓してもらってたんだ。勝負の期限が今日の夕方までだったから神楽を実家に残して行く事になっちゃって、早く戻れれば良かったんだけど思いの外、時間掛かってさ……」
「そう、だったんだ……」
「亜夢に隠してたのは、内緒でチケットを取って驚かせたかったから。不安にさせてごめんね。亜夢が何か感じ取ってるのは分かったんだけど、ここまで来たらどうしても言えなくて。でも無事勝負には勝てたし、不安にさせた分、明日は絶対楽しませるから、許して?」
百瀬くんの話を聞いた私は彼を疑ってしまった自分が恥ずかしいのと信じてあげられなかった事が情けなくなった。
彼はこんなにも、私や神楽の為に一生懸命だったのに。
「……百瀬くん……ごめんね……っ」
「何で亜夢が謝るの? っていうか泣かないでよ」
突然私が涙を流し始めた事に焦った百瀬くんは私の身体を抱き締めながら、ポンポンと頭を撫でてくれる。
「だって、私……、百瀬くんの事、少しだけ、疑っちゃったから……っ」
「あー、まあ、それは仕方ないよ。いくら仕事だって言っても流石に無理あったなと思ったし、怪しまれてるのは分かってたし、逆の立場なら、俺だって疑っちゃったかもしれないからね。気にしてないよ」
「でも……っ」
「泣かなくていいよ。亜夢は悪くないから。ただ、俺は何があっても亜夢を裏切らない。亜夢は色々不安に思ってるみたいだけど、職場での俺は愛妻家で通ってる。机に亜夢と神楽の写真を堂々と飾ってるくらいだからね。最近では取り引き先の人にまで知れ渡ってるから、わざわざ言い寄って来る人もいないよ」
「そ、そうなんだ?」
びっくりした。写真を飾ってるとか、愛妻家と言われているなんて初耳だったから。
「条件?」
「永瀬さんに囲碁で勝つ事。しかもチャンスは一度きり。彼、囲碁好きで有名な人なんだけど、好きなだけあってとにかく強いらしくてさ……俺は囲碁そこまで得意じゃ無いから、永瀬さんに勝つ為に知り合いの囲碁が得意な人に頼んで、リモートだったり直接会ったりしてアドバイスを受けながら特訓してもらってたんだ。勝負の期限が今日の夕方までだったから神楽を実家に残して行く事になっちゃって、早く戻れれば良かったんだけど思いの外、時間掛かってさ……」
「そう、だったんだ……」
「亜夢に隠してたのは、内緒でチケットを取って驚かせたかったから。不安にさせてごめんね。亜夢が何か感じ取ってるのは分かったんだけど、ここまで来たらどうしても言えなくて。でも無事勝負には勝てたし、不安にさせた分、明日は絶対楽しませるから、許して?」
百瀬くんの話を聞いた私は彼を疑ってしまった自分が恥ずかしいのと信じてあげられなかった事が情けなくなった。
彼はこんなにも、私や神楽の為に一生懸命だったのに。
「……百瀬くん……ごめんね……っ」
「何で亜夢が謝るの? っていうか泣かないでよ」
突然私が涙を流し始めた事に焦った百瀬くんは私の身体を抱き締めながら、ポンポンと頭を撫でてくれる。
「だって、私……、百瀬くんの事、少しだけ、疑っちゃったから……っ」
「あー、まあ、それは仕方ないよ。いくら仕事だって言っても流石に無理あったなと思ったし、怪しまれてるのは分かってたし、逆の立場なら、俺だって疑っちゃったかもしれないからね。気にしてないよ」
「でも……っ」
「泣かなくていいよ。亜夢は悪くないから。ただ、俺は何があっても亜夢を裏切らない。亜夢は色々不安に思ってるみたいだけど、職場での俺は愛妻家で通ってる。机に亜夢と神楽の写真を堂々と飾ってるくらいだからね。最近では取り引き先の人にまで知れ渡ってるから、わざわざ言い寄って来る人もいないよ」
「そ、そうなんだ?」
びっくりした。写真を飾ってるとか、愛妻家と言われているなんて初耳だったから。