《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
「俺には亜夢だけ。それはずっと変わらない。他の女なんて、どうでもいい。亜夢以上に魅力ある人なんていないんだから」
「……百瀬くん……」
「けど、俺が悪いんだよなぁ……不安にさせないって言いながら不安にさせてるんだもん……」

 そう言ってガックリ肩を落とす百瀬くん。

 だけど、今回の事は百瀬くんのせいじゃない。

 元はといえば、私が信じきれなかった事、周りの話に影響されて勝手に不安に感じてただけなのだから。

「……ううん、百瀬くんのせいじゃないの、あのね、そもそも不安に思ったのは、百瀬くんが誰かと頻繁に連絡を取ってたところもあるんだけど……会社から貰ってきたチョコの中に手作りの物があって……今まで手作りなんて無かったし、それにね、ママ友たちから、妊娠中は旦那の浮気に気をつけないといけないって話を聞いたから……どうしても、不安で……それで、勝手に疑ってたから……」

 百瀬くんのせいじゃない、私が勝手に不安に思っただけだと伝えると、

「そうだったのか……。ごめんね、配慮が足りなくて。あの手作りは本当、深い意味は無いんだよ。先輩の子供が手作りにハマってるらしくて、沢山作ったからって社員みんなに配った物なんだ」

 手作りお菓子の真相を話してくれた。

 それを聞いてホッとしたし、不安に思った時にすぐに聞けば良かったなと思った。

「そっか……それなら良かった……」
「最初に言えば良かったよね。今度からは気をつけるよ」
「ううん、百瀬くんは悪くないよ。私も不安に思ったらすぐに聞けば良かったんだもん……ごめんね」
「俺ももっと気をつけるけど、亜夢も不安に思ったら隠さずにすぐに言ってね」
「うん、今度からはきちんと言うね」

 なんて答えてはみるものの、それはそれで悩みもある。

 だって、不安に思うことは沢山あるし、その都度伝えていたら、百瀬くんも疲れちゃいそうだなって思うから。

 そんな私の心はやっぱり漏れているのか、百瀬くんは、

「ほらまた。今言ったばっかりだよ? 不安に思うことはすぐに言うって。何が不安なのかな?」

 再びぎゅっと抱きしめながら、問い掛けてくれた。
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