《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
「……不安に思う事は沢山あるから……その都度言ってたら、百瀬くんが嫌な気持ちになるんじゃないかなって……」
「そんな事? ある訳ないよ。寧ろ、言ってくれない方が嫌な気持ちになる。俺としては、どんな時でも、どんな事でも話して欲しいから」
「百瀬くん……」

 本当に、彼はどこまでも優しい。

 こんなに私を思ってくれる彼を、一瞬でも疑っていた自分が情けない。

 気付けば涙が溢れていた私の頭を撫でながら、百瀬くんは優しい言葉を掛けてくれる。

「自分を責める事なんてない。今回の事は俺だって悪かったんだから、お互い様。これからはもっと、今以上にきちんと言いたい事を言い合えばいいじゃん。ね?」
「……うん……」

 そして、私の瞳から流れる涙を指で掬ってくれた百瀬くんが、私の唇を自身の唇で塞いできた。

「ん……ッ」

 最近は私の身体を気遣って、少し物足りなさが残る軽いキス止まりだったけど、今日はどうしてもそれだけでは足りなくて、私の方が百瀬くんを求めてしまっていた。

「ももせ、くん……っ、もっと、して?」
「――そんな顔でそういう台詞は反則じゃない? けど、亜夢の身体に負担がかかるといけないから……」
「……大丈夫、だから……お願い……」

 私のお願いを聞き入れてくれた百瀬くんはもう一度私の唇を塞ぐと、触れるだけの優しいキスから少しずつ、激しいキスへと変わっていく。

「――ッんん、」

 息継ぎをしようとしていたさなか、百瀬くんの舌が私の口内へと侵入してくる。

 一度スイッチが入ってしまうと止めれられなくなるのは分かってる。

 百瀬くんは私に負担を掛けないようにと我慢している事も。

 百瀬くんの優しさや気遣いは嬉しいけれど、これ以上不安を感じないよう、百瀬くんと繋がり合いたかった。

 けど、

「亜夢と赤ちゃんの安全の為にも、挿入は無しね。けど、今日は亜夢の事、沢山気持ち良くしてあげるから――覚悟してね?」

 やっぱり百瀬くんは私の身体を気遣ってか、繋がり合う事はしなかったけど、宣言通り、沢山愛されたのは言うまでもない。



「……ん、」

 朝、ふと目を覚ますと、既に起きていた百瀬くんと目が合った。

「おはよ、亜夢」
「おはよ……」
「昨日の亜夢は可愛かったなぁ」
「もう、言わないで……ッ恥ずかしいよ……」

 昨夜の事を改めて言葉にされると恥ずかしくなり、私は手で顔を覆いながら布団に潜り込んだ。

「照れてる亜夢も可愛い」
「もう、言わないで」

 昨夜は我ながら少し積極的だった。

 思い返すと恥ずかしいけど、不安に思うくらいなら積極的になるのも悪くはないし、思った事を素直に伝える事は大切だと、改めて分かった。

 私の全てを見せられるのは百瀬くんだけなのだから、一人で悩まないで相談しよう。

 して欲しい事があったら、伝えてみよう。

 そうしたらきっと、これから先、不安を感じる事は無くなるはずだから。




 ―END―
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