《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
「夕食の時の神楽の言葉にはビックリしたよね」
「うん」

 日付が変わる頃、寝室のベッドに入った私たちは改めて神楽が兄弟を望んでいる話をし始めた。

「まあ、俺としては、いつでも大歓迎なんだけど……亜夢は、どう思う?」
「……私も、神楽が望むのなら、考えてもいいかなって、思うよ」
「本当に?」
「…………」

 私が二人目を作るのに少しだけ消極的な一番の理由は、神楽の出産の時がかなりの難産でトラウマになってしまったからだったりする。

 それを分かっている百瀬くんは私の意思を尊重してくれて、基本Hの時は避妊をしていた。

 勿論、そうしない時もあって、それで授かってしまった時は覚悟を決めて臨むつもりだったけれど、そうはならなかった。

 その事を残念に思いつつも、どこかホッとしている自分もいた。

「……正直に言うと、怖いの。またあんなに大変だったらどうしようって……」
「うん、そうだよね。あの時は俺も、本当に気が気じゃ無かった。どうする事も出来ない自分に腹が立った。だから、無理はしなくていいよ。俺としては亜夢の身体が一番大切だし、無理強いはしたくないんだ」
「……でも、ね……神楽にとっても、やっぱり兄弟は必要だと思うし、私だって……百瀬くんとの子供は何人居ても、嬉しいから……覚悟、決めるよ」
「亜夢……。分かった。俺も一生懸命サポートするから、一緒に頑張ろうね」
「うん……ありがとう、百瀬くん」

 前向きに考え始めた途端、不思議と恐怖は薄れていく気がした。

「……それじゃあ、今日はちょっと、頑張っちゃおうか?」
「…………うん、そうだね」

 明日は休日という事や、ここ最近は少しご無沙汰だった事もあって、そのまま見つめ合った私たちはどちらからとも無く唇を重ねてキスをする。

「……ッん、……ふぅ、ぁッ……」

 啄むようなキスをしながら頬や耳を撫でられると、思わず吐息に混じって声を漏らしてしまう。

「っんん、……はぁ、ッんん」

 そして徐々に激しめのキスへと変わっていき、息継ぎの為に軽く口を開くとそのまま舌を割入れられて、強引に舌を絡め取られてしまった。
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