《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
「困ったなぁ……神楽の欲しい物……全然分からないや」

 あれから休日にショッピングモールへ行って玩具売場で欲しい物を探ろうと思っても、何故か玩具に興味を示さず素通りしたり、テレビのCMで玩具系のものが流れた時に「これ、今人気だよね? 神楽もこういうの欲しいんじゃない?」なんて聞いてみても、「いらない」「オレべつに好きじゃない」と言って部屋へ戻ってしまう。

 だけど、そんな神楽の行動は流石におかしいと思った私は幼稚園でお友達と何かあって欲しい物どころではないのかもしれないと先生に聞いてみたものの、「いつも通りお友達とも仲良く遊んでいますし、園では変わった様子もないですよ」と言われてしまった。

 そして、クリスマスプレゼントについて相談してみると、「無理に聞き出すのは良くないです。親御さんとしては、本人の欲しい物をプレゼントしてあげたい思いは分かりますけど、お子さんは欲しい物かどうかよりも、良い子にしていたからサンタさんがプレゼントをくれたという事が嬉しいと思いますから、本人が喜びそうな物を選んでプレゼントしてあげるのも良いと思いますよ」というアドバイスを受けたので、百瀬くんと相談した結果玩具では無く、色々な物に興味を持って知りたがる事も多くなっていた神楽がこれから沢山使えそうな図鑑のセットをプレゼントする事にした。

 そして、クリスマスイブの日。

「うわー! ごちそうだ! おいしそう!!」

 明日のクリスマスは荒木田家で神楽の為のクリスマスパーティーをやってくれるというので、今日は私たち家族だけでパーティーを楽しむ事にした。

 去年はテーマパークに一泊した事もあって作らなかったけれど、今年はチキン以外は全て手作りにしてみた。

 百瀬くんも手伝ってくれて品数もそれなりになり、豪華な食事を前にした神楽は瞳を輝かせながらどれから食べようか悩んでいた。

 そして、ご飯を食べ終えてケーキを食べている時、

「サンタさん、オレのてがみよんでくれたかな?」と私や百瀬くんに聞いてくる。

「お手紙、どこに置いておいたの?」
「まどのところにおいたよ」
「そっか。それじゃあお手紙、きっと読んでくれたと思うよ。だけど、もしかしたら欲しいプレゼントは貰えないかもしれないけど、その時はガッカリしちゃダメだよ?」
「サンタさん、いそがしいから?」
「そうそう。沢山の家に行くから、欲しい物が間に合わないかもしれないんだ。でも手紙は読んでくれてるはずだから、遅くなっても後できっと、欲しい物は届けてくれるよ」
「そっか! それならいいよ! オレ、まてるから!」
「偉いね神楽は」

 神楽が眠った後で手紙を読んで、本当に欲しい物が分かったら明日のパーティーの時までに用意してプレゼントしようと考えていた私と百瀬くんは神楽に言い聞かせるも、思いの外プレゼント自体にこだわりがないように感じた。

 日付が変わる前、ようやく眠った神楽を起こさないように百瀬くんと二人で部屋に入り、ベッドの横に図鑑のセットが入った包みを置いてから窓にあったサンタクロース宛の手紙を二人で読んでみると、そこには【サンタさんへのおねがい】という書き出しから始まっていて、目を通した私と百瀬くんは神楽が一番欲しいものが何かを改めて知る事になった。
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