背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
大きな音で鳴り響く音楽も、騒がしい声も、全部通り抜けて私の元に届いた……聞き心地のいい声。
その瞬間、その声の持ち主にうしろから思いきり引き寄せられた。
思わずバランスを崩して倒れそうになると、彼はグッと距離を縮めて、私の肩に腕を回して抱きしめる。
爽やかなウッディの香りがふんわりと私の鼻をかすめた。
「(距離が……っ、近いっ)」
「高瀬、綾人っ」
「クソッ、なんで今日に限って……っ」
うしろの彼が来た途端、私を連れ出そうと躍起になっていた三人の男の人たちは一斉にうろたえはじめる。
少し前までの勢いはなくなって、強く掴まれていた腕はすぐに解放された。
「なぁ、お前ら。俺のクラブで変なことすんなよ、な?三人揃って出禁にしちゃうよ?」
「す、すみません……でした」
「すみません、じゃ済まないんだよねぇ。この子、すごい怯えてるわけだし」
「……っ」
「ねぇ、キミはどうしてもらいたい?お金もらっちゃう?それとも土下座でもしてもらう?」
「え、いや、えっと……」