背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
予想もしていなかった綾人さんの言葉に、思わず俯いていた顔をあげると、彼の大きくてきれいな瞳には私だけが映っていた。
二人の視線が重なりあった途端、私の心臓はまた大きく飛び跳ねる。
「(これは、恋じゃなかったの……?)」
綾人さんは不思議な人だ。
彼の声は、なんだか私の中にスッと溶け込むように入ってくる。
「いつか、里緒ちゃんが頑張らなくても全部を委ねられる相手が見つかるといいね」
「……っ」
私の全部を、委ねられる相手──。
いったいそれは、誰なんだろう。
そんなことを漠然と考えながら、私はもう一度綾人さんのほうを見た。
「それにしても、その橋本くんって子にはちょっとお仕置きが必要だね」