背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
「……綾人、さん!?」
見間違い、なんかじゃなかった。
そこに、綾人さんが立っていた。
ほんの少し前まで感じていた不安や焦りが、私の中から一気に消え去っていった。
頭の中は『どうして綾人さんが学校に?』という疑問で埋め尽くされていく。
いくら放課後とはいえ、私服姿の綾人さんの登場に、ここにいるクラスメイト全員が彼に釘付けになっている。
となりにいる橋本くんでさえ、綾人さんのほうを怪訝そうな顔をして見ていた。
「……里緒、あの人誰?」
「あ、えっと」
「誰、だろうね?」
綾人さんは私を見つけると、橋本くんとの間に割って入るように近くへやってきた。
彼との距離が近づくたびに、胸のドキドキが大きくなっていく。
「キミだよね?橋本くんって」
「……そう、だけど」
「あんまり里緒ちゃんをいじめないでもらえるかな?」
「は?なんでアンタなんかにそんなこと」
「──俺の大事な子、だからだよ」