背伸びして、君とありったけのキスがしたい。




「……え?」



橋本くんよりも背が高い綾人さんは、わざと彼を見下ろしながら片方の口角を上げてそう言った。


綾人さんがここにいるという事実だけでも、パニックになりそうなくらい驚いているのに、私の代わりに橋本くんと向かい合ってくれているという今の状況に、胸の高鳴りがおさまらない。




「ハッ!やっぱりそうだったんだ、里緒は浮気してたわけだ!」


「里緒ちゃんは浮気なんてしてない。君、それでも彼女の“元カレ”なの?笑えるね」


「いやどう見たって普通の関係じゃないだろ!」


「まぁ、普通の関係ではないよね。……だって俺が、一方的に里緒ちゃんに惚れちゃってんだから」


「はぁ!?」


「だからこうやって、学校までお迎えにきたってわけ」



綾人さんが、私のことを!?


そんなわけない、そんなことあるはずない。



真っ赤に染まる顔を隠しながら、彼の甘い言葉に惑わされないように大きく首を振った。




「(……そうだ、もしかして)」



そのとき、ふと思い出した。


『それにしても、その橋本くんって子にはちょっとお仕置きが必要だね』






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