背伸びして、君とありったけのキスがしたい。





綾人さんの、あの言葉。



あぁ、私、分かってしまった。


綾人さんのクラブで話を聞いてもらったあの日、彼は橋本くんに『お仕置きしなくちゃ』と言っていた。

きっと今が、そのときなんだ。



「ってか、まず誰なんだよアンタ」


「ハハッ、大人に向かってアンタ呼びはよくないなぁ」


「俺は今、里緒と話してんだから邪魔しないでもらえる?」


「悪いけど、里緒ちゃんはもう君のものじゃないでしょ。彼女は俺が大事にもらい受けるから」


「……は?」


「──だから金輪際、二人きりになることは許さない」



綾人さんの言葉は全部、嘘だって分かっている。


橋本くんに制裁を加えるためのものだって、ちゃんと理解しているはずなのに。



「(さっきから、私の心臓……うるさいっ)」

彼の言葉一つ一つが、私の体を熱らせていく。





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