背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
「じゃ、じゃあまずはその第一歩として……連絡先を教えてください!」
「ハハッ、里緒ちゃんがそんなに大胆な子だって思わなかったな」
「グ、グイグイくる女の子は嫌……ですか?」
「ううん、嫌じゃないよ」
そう言って笑いながら、綾人さんは自分のスマホを取り出して画面をタップしていく。
「里緒ちゃんの番号、教えてくれる?」
「あ、えっと080の……」
綾人さんの近くにいると、こんなにも緊張して、ドキドキしっぱなしで、『前髪変じゃないかな』だとか、『ちゃんとメイクしてくればよかったな』だとか、そんな些細なことを気にしてしまって。
今まで感じたことのないこの胸の高鳴りに慣れなくて、少しだけ呼吸がしづらくなる。
それでもどうしてか、綾人さんから離れたくないと思ってしまうこの矛盾はいったいなんなのだろう。
「じゃあ、またね里緒ちゃん」
「はい、また……!今日は本当にありがとうございました!」
「くれぐれも、変なクラブとか行かないようにね」
「も、もう行きませんってば!」