背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
いつか読んだ恋愛小説に、『女の子は一生懸命に追いかける恋よりも、追われる恋のほうがずっと楽で、簡単で、満たされるものだ』と書かれてあった。
少し前までは、私だって大好きな人からうんと甘く愛される恋を夢見ていた。
だけど、私が好きになった人は……きっとそんな悠長なことを言ってられる相手じゃない。
綾人さんは私にとって、雲の上の存在だから。
必死に背伸びして、両手を伸ばして、追いかけて、運命の糸を手繰り寄せなくちゃならない。
「私、頑張るから!」
勢いよく立ち上がって、私は私は決意を固めた。