背伸びして、君とありったけのキスがしたい。


【綾人side】


里緒ちゃんを家の前で降ろして、一人、何の変哲もない道を走らせていく。


少し前まで助手席に座っていたあの子は、ちゃんと家に帰っただろうか。


また夜中に悪い遊びなんてしてないといいけど。



「……って、俺は保護者か」


となりでコロコロと笑う里緒ちゃんとの時間は、案外悪いものじゃなかった。




とはいえ、彼女はまだ高校生。

しかも恋に恋をしているような、穢れを知らない初心な子だった。



『綾人さんを、その、メ、メロメロにしてやりますから!』


『い、今すぐには無理かもしれないけど、時間をかけてコツコツとメロメロにさせていく予定です!』


『いつか、綾人さんと2人で幸せになりたい……です』



一心に俺のほうを見ながら言い放ったあの言葉が、ずっと頭の中に残っている。


これまで他の女の子たちから『幸せにして』と言われたことはあっても、『幸せにしてあげる』なんて言われたことはあっただろうか。




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