背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
「……ま、とはいえ10代の女の子とどうこうなるつもりなんて、絶対ないけど」
ごめんね、里緒ちゃん。
俺は君が思っているようないい男じゃない。
里緒ちゃんは俺のことをカッコいいヒーローだなんて言ってくれたけど、そんな大層な人間でもないんだよ。
ブーブーブーッ。
信号が変わって車を停止したとき、スマホに着信が入った。
《おーい綾人、お前今どこにいんだよ》
スピーカーモードで電話に出ると、相手はお決まりの聡太だった。
「んー、ちょっと寄り道してた」
「お前なぁ、今日は梨奈さんがお前の店にくるから顔出すって話だっただろ?」
「……あ、やっべ」
「やっべ、じゃねぇ!今すぐ来い!みんな待ってんだからな!」
「はいはいはいはい」
「はい、は1回!」
聡太の小言は今日にはじまったことじゃない。
いつものように適当にあしらいながら、俺は道路の道端に車を停車させた。