背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
グッと私の腕を握って、真剣にそう言ってくれる綺良ちゃん。
その表情が少し複雑そうに見えるのは、相手が綾人さんだからだろうか。
「そういえば、綺良ちゃんと綾人さんってどういうつながりなの?」
「んー、そうだなあ。綾人と直接つながりがあるっていうより、綾人のマネージャーをやってる聡太くんって人がいるんだけど、あたしは聡太くんと仲がいいから、それで自然に綾人とも顔を合わせるようになったって感じかな」
「綾人さん、マネージャーがいるんだ」
「でも聡太くんは綾人の中学時代からの友達でもあるから、マネージャーっていうより綾人のお世話係ってイメージのほうが強いんだけどね」
綺良ちゃんは『聡太くん』の名前を出すたびに、なんだかいつもより少しだけテンション高く嬉しそうに話してくれた。
綾人さんにマネージャーがいることも、周りの友達関係も、私はまだ何も知らない。
これから少しずつ、彼のことを知っていけたらいいな。
「こうなったら、里緒と綾人をくっ付ける機会をどんどん作らなきゃ、だね!」
「く、くっ付ける!?」
「そうだよ!あの綾人を彼氏にするなら、しっかり作戦を立ててジワジワ追い詰めないと!」
「確かにそうだね!メロメロにしてやるって決めたんだもん!」
綺良ちゃんと2人でガッツポーズを決める。
そして『綾人さんをメロメロにしてやる作戦』を具体的に決めようとしたとき。
「……里緒。ちょっとだけ、話せない?」
そう声をかけてきたのは、橋本くんだった。