背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
「橋本くん……」
「ちょっと、アンタねぇ!どんな顔して里緒の前に立ってるわけ!?」
キッと牙を向けるように立ち上がって、声を荒げる綺良ちゃん。
いっぽうの橋本くんは、それを見て余計に顔を曇らせた。
「ごめん、分かってる。あのとき里緒を傷つけたってこと」
「じゃあなんでまた里緒に話しかけてくんのよ!」
「ちゃんと、謝りたくて」
いつもより顔色が悪くて、元気がない様子の彼を見ていると、前のように私を問い詰めようとしているわけではなさそうだ。
綾人さんが学校に来てくれたあの日から、橋本くんとは一言も会話をしていない。
だからと言って、これ以上逃げてばかりはいられない。
「うん、いいよ」
「里緒!?ダメだよ、また前みたいに……」
「私も橋本くんに話しておきたいことがあるから、大丈夫だよ綺良ちゃん」
「でも!」
「すぐ戻ってくるから、ちょっとだけ待っててね」
橋本くんに怒り心頭の綺良ちゃんをなだめるようにそう言って、私は橋本くんと2人で人気のない場所へ移動する。
申し訳なさそうにうしろをついてくる彼は、私と目を合わせようとはせずにずっと下を向いて歩いていた。