背伸びして、君とありったけのキスがしたい。
「橋本くん、話ってなに?」
「あ、あぁ、えっと……まずは、本当にごめん。浮気疑ったり、里緒を傷つけるようなこと言って」
「……」
「あんなこと、言うべきじゃなかった」
橋本くんの言う“あんなこと”が、また頭の中で蘇ってくる。
『この前もさぁ?俺の家で勉強会したんだけど、マジで勉強だけして帰るとか……普通あり得なくね?』
『でも子供っぽいっていうか、付き合うって意味知ってる?って感じだしなぁ』
私はそれらを振り払うように首を振って、そして橋本くんのほうを見た。
「もう大丈夫だよ」
「え?」
「ある人にね、言われたんだ。私が橋本くんに抱いていた思いは、恋じゃないんだって」
綾人さんが言っていた。
努力して相手のことを好きになろうとするのは、恋なんかじゃないって。
心も身体も差し出せない人は、運命の人ではないんだって。
「橋本くんに告白されたときね、私すごく嬉しかった。でも、それは恋とはまた違うものだったんだって、今なら分かるよ」
「……」
「それって橋本くんに失礼なことでしょ?だからおあいこ。私も悪かったんだから、もう謝らないで?」
それに何より、今回の一件があったから私は綾人さんに出会えた。
橋本くんのあの言葉を聞いたときは本当に苦しかったけれど、綾人さんとのつながりができたことで、あれ以上苦しまなくて済んだんだ。