隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 気分を変えたくて、外の空気を吸おうと窓に近付いた。


 ……あ。

 わたしは校門から下駄箱までの道を歩く彼を見つけて、手を振った。


「朔耶ー!」


 瞬時に気付いて顔をあげた船橋朔耶が、少しだけ顔をほころばせる。


「越谷」


 周囲を気にして少し恥ずかしそうにしながら、立ち止まって手を振り返してくれる。


「フフッ、おはよー!」

「おはよ」


 サッカー部の船橋くんとは、この一週間でだいぶ仲が良くなった。
 初日は敬語も抜けなかった彼が、今では普通にため口で〝越谷〟と呼んでくれるようになった。 わたしのほうも今は〝船橋〟より呼びやすい〝朔耶〟って呼び方で落ち着いている。


「越谷、今日も部活くる?」

「もちろん!今日も頑張ろうねー!」


 朔耶は心なしかちょっと嬉しそうな顔でこくりと頷いた。


「じゃあ、また」

「うん! またねー」

 
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