隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 あまりの衝撃に、ベリーが口から出そうになった。


「ンッ、!? ンンッ、」


 慌てて口元を押さえて、急いでベリーを噛んで喉の奥に押し込むけれど、むせてしまう。

 すると目の前に、水入りのグラスが差し出された。


「……大丈夫ですか?」


 初めて聞いた彼の声は男性らしい低い声で、どこか甘い。


「っ、あ、あり、ありが、とう」


 顔を上げられないまま両手で水を受け取って、回らない口でなんとかお礼を言う。

 見守られながらおずおずと冷たい水を口に入れ、なるべく喉が鳴らないようにコク、と飲み込む。

 王女とは思えない自分の醜態に恥ずかしさで気が狂いそうになりながらそろ、と顔をあげた。

 すると、息を呑むほどに美しい男性がこちらをまっすぐに見つめているので。


「っ……、」


 顔の表面温度がみるみる上昇して、沸騰した。

 そんな私の顔を見た彼は、フ、と控えめに口角を上げた。

 

「……顔が赤いですね」

「えっ、あ、……っ」



 指摘されて頬の熱さが全身に広がっていく私を、彼はわざわざ覗き込むようにしてじっと眺めてくる。



「少し外で涼みませんか」


 
 ……これを断れる女の子なんて、この世に存在する?




< 12 / 251 >

この作品をシェア

pagetop