隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
「そこのバルコニーに出ましょうか」
彼が少し先にあるバルコニーへの扉を見つけて指さしたので、「ええ」と慌てて相槌をうつ。
ドキン、ドキン、これ以上ないくらいに胸の音が大きくなって、心臓が止まってしまわないかと怖くなる。
先を行く彼が扉を左右に開いて、バルコニーに出た。
ビュウ、と冷たすぎない夜風が舞い込んで、彼と私の髪や衣装をなびかせる。
一度目を閉じて、開いた先には
小さな星を散りばめた夜空に、世界を食べてしまいそうなほど大きく眩しい満月。
「……綺麗ですね」
静かにそう言った彼がバルコニーの柵の方まで行って振り返り、私に手を差し伸べた。
銀色の髪が月明かりに透けてキラキラと煌めいて、長いまつ毛の奥のエメラルドグリーンの瞳に宮廷内の橙色の照明がぼんやりと映り込んだ。
私はその景色に言葉を失った。
どこからかやってきた薄桃色の花びらが柔らかい風に舞う中、目を覆いたくなるほどの眩しい満月を背負って凛と立つ彼の姿が、あまりにも幻想的で……夢のように美しかったから。
動けなくなった私に彼は目を細め、やわらかく口角をあげた。
するとまた胸が騒ぎだして、顔が熱くなる。
無償に切なくなって、喉の奥の方がキュッとしまり、涙が出そうになる。
私は生唾を飲み込んで、彼に向かって一歩を踏み出す。
激しく、でも優しく高鳴る心臓を押さえながら、思う。