隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
「あ。 目隠しチャンバラやってる」


 学食で昼食を食べ終えてクラスの友達と教室に向かう途中、友達が校庭で盛り上がる男子の集団を見て言った。
 その中心に、ふざけたアイマスクをして、柔らかそうなスポンジ製の剣を手に持つ酒々井優成を見つけた。

 酒々井と同様の格好をした男子がほかに二人いる。
 三人は音を立てないようにそろそろと動いて様子を伺っている。
 
 誰もいない前方に向かって構えた酒々井が、ブンッと勢いよく剣を振った。
 すると、すぐ後ろにいた男子が酒々井の頭を叩いた。

 
「あたっ」


 頭をおさえる酒々井に、その場にいる男子たちがどっと笑う。

 
「あっはは!弱すぎだろ優成!」

「佇まいはハリウッド俳優みたいなのに!」


 笑い転げる周囲に、酒々井は「俺、剣より銃派だもん」と呑気な声を返している。


「ははっ、いいなー楽しそう」


 隣の友達が言って、目隠しチャンバラって?と聞いてみる。

 
「名前の通り目隠ししてチャンバラするんだよ。 見えないから気配で斬るの。 一回だけ縦に振っていいルールで、全員空振りしたら再試合」
 
「へー……」


 ふと視線を校舎の方へ泳がせた時、窓から校庭を眺める女子たちの中に、越谷の姿を見つけた。
 頬杖をついて興味なさそうな空気を装いつつ、目で追ってるのはたぶん、酒々井の姿。

 その複雑そうな表情で、なんとなく思う。


 ……やっぱり、酒々井となにかあったんじゃないだろうか。


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