隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
第四章『世界一尊い恋』
殺し屋になったのは / side〝彼〟
物心ついたころには、優しい兄と二人だった。
「ヨルゴ!見ろ!角に住んでる爺さんがオレンジを恵んでくれたぞ!」
「! やったぁ!」
ヨルゴ・フォーキー、6歳。
兄のルーカスに甘えるだけでなにもしない、ただのクソガキだった。
「誰かに見つかる前に食べよう。 半分こしような」
「うん……!」
このトンサニス王国は戦争に勝ったらしい。
だけど戦災孤児の保護は後回しにされていて、廃れた街の路地裏には俺たちのような子供が掃いて捨てるほどたくさんいて、みんなみんな、生きるのに必死だった。
「……! ルーカス! うしろ!」
俺はルーカスの後ろに忍び寄る影を指さした。
そしてその影はあっという間にルーカスの手にあったオレンジを奪い、走り去る。
「待て!ドロボー!!」
ルーカスと二人追いかけたけど、オレンジを奪ったのは兄よりも少し大きい少年で、俺たちの足では追いつけずにすぐに見失ってしまった。