隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 俺が見守り始めて二年ほど経ったある日、エミリアは外出中に部屋で保管していた母の形見のブローチが無くなったと、城中を探し回ることがあった。

 エミリアは自分がどこかで失くしてしまったのだと言っていたけど、俺はずっと見ていたからわかる。 十中八九城の誰かの仕業だ。 
 エミリアが外出するときは俺も一緒についていくので、誰がいつ部屋に侵入して、どこにどうやって隠したのか、もしくは捨てたのかもわからない。

 エミリアが半べそで地べたを這いずりながら探すので召使いたちが手伝おうとすると、エミリアは仕事の邪魔をしたくないと、それを止めた。

 そして俺は聞いてしまった。
 エミリアのブローチを裏の山に捨ててやったという義母の内緒話を。
 裏の山に行ってみると、まぁ広い。 比べてブローチの小ささを考えて愕然としたけど、エミリアの泣きそうな顔を思い出して、意を決して裏山の中に足を踏み入れた。
 ようやく半分土に埋まったそれを見つけられたのは、東にあったはずの太陽が西に沈もうという時だった。
 泥だらけになったブローチを丁寧に水で洗って、エミリアの部屋の窓辺にそっと置いておいた。
 窓の外、木の上からエミリアがそれを見つける姿をこっそり見守る。
 エミリアはブローチを手にしてパァ、と目を輝かせた。

「妖精さんだ!」

 ……妖精さん?

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