隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
「なにか口にした方がいい。 このベリー、さっき食べたがとても甘くて美味しかったよ」

「ああ、そうですね。 いただきます」


 促されるままベリーを口にしたとき、ちら、とエミリアの方に視線を巡らせてみると、彼女のつぶらな瞳と再び目があった。

 走ったわけでもないのにこんなに心臓の音が速くなるなんて、聞いてない。
 こんなに体が思うように動かなくなるなんてことも、聞いてない。

 どうしようもなく胸がときめいてしまって、どうしたら良いかわからなくなった俺は、思わず口角をあげた。


 そこで、強い視線を感じた。


 ……マートンだ。 マートンがエミリアのすぐ後ろに立って強い殺意を俺に向けている。

 マートンは事前に今回の作戦について説明した際、私情は挟まず仕事に専念すること、と語気を強めて言った。

 そうだ。 仕事、これは仕事。 エミリアはただの保護対象、ただの人間の女。
 
 そう自分に言い聞かせてなんとか気持ちを切り替えた。

 その後、エミリアが色んな男に誘われて踊るのを、自分も適当な女と踊りながら横目で追う。

 練習したダンスを間違えないように懸命に踊っている姿が愛らしくて、同時に彼女に触れる男たちの手がどうしても気になったし、彼女と目が合うたび、胸が疼いた。

 ……おいおい。 これじゃどっちが仕掛けにいってるのかわからないじゃないか。



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