隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 そして、作戦通り殺し屋のメンバーが来賓のふりをしてマートンを呼び出し、エミリアから離させる。 俺がエミリアを連れ出すタイミングが来た。
 もちろんマートンはこのことを知っているが、あえて殺し屋の作戦にのって、うまくいっていると油断させる手筈になっている。
 そのとき、再びマートンから〝しっかりやってくださいね〟という視線。

 わかってる。 あくまで彼女を守るため、作戦通りに。


 一人になったエミリアはたくさん踊って疲れたのか、椅子に座ってぼんやりしていた。

 冷静に、冷静に。

 浮かれようとする自分を抑え込んで近づき、エミリアの横に立った。

 そして気付いた彼女が俺を見てハッとする。


「ンッ、!? ンンッ、」


 ベリーを喉に詰まらせたのか苦しそうにする彼女に、驚かせてしまったことをひどく後悔しながら、近くにあった水を彼女の前に差し出す。


「……大丈夫ですか?」

 
 それが、彼女に初めてかけた言葉だった。
 緊張のせいか、浮かれてしまっているのか、自分の声じゃないみたいに上擦ってしまった。


「っ、あ、あり、ありが、とう」


 エミリアは俺から水を受けとって、恥ずかしそうに口に含む。
 これまで毎日エミリアを見てきたはずなのに、彼女のそんな姿は見たことがなかった。
 彼女の辞書に人見知りという単語はないのだと思っていたのに、どうやら違ったらしい。
 もしくは、俺が怖がらせてしまっているのだろうかと不安になって、彼女の様子をじっと見てしまう。
 それに気付いた彼女が、俺のことを見返した。


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