隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。


 
「っ……ふざけないで!」


 …………ひまり?


「散々振り回して、嘘ついて、その上置いていこうとするなんて……! 許さないから!」


 もしかして、泣いてる?


「もしこのまま話せなくなっちゃっても……っ、また来世で絶対に見つけて、今度はわたしがハニートラップ仕掛けてやる! 今度こそ、本気で恋させてやるんだから!!」


 ……ひまりの、ハニートラップ?

 なにそれ。 絶対面白い。


 つーかそれ、やるなら、




「……いま……して」



 俺は思い通りにならない口をなんとか動かして、声にした。



「……! 優成……!?」


 名前を呼ばれて、重たい瞼をなんとか押し上げる。

 すると、涙でぐちゃぐちゃにした顔をほころばせるひまりの姿が映った。


「優成……!」

「先生呼んでくる!」

「うん!」


 いま出て行ったのは……船橋くん?

 徐々に覚醒してきた目で辺りを見渡して、ベッドの上、自分の腕につなげられた管や、ピッピッと規則的に音を鳴らす心電図の様子からここが病院であることを悟る。


 ……あれ。 生きてたのか、俺。


 ひまりが「もぉ~……」と声をもらしながら俺の首に抱きついてくる。


「バカ……バカ、バカバカバカバカ」

「……ふ。 めっちゃ言う」


 腕が持ち上がらなくて、ひまりの頭を撫でてやれないことが悔しい。


「優成……ずっと守ろうとしてくれてたの……?」


 ひまりがべそをかく少女みたいに、か細い鼻声で聞いた。


「……結果このざまだけど」


 自分のことながらかっこ悪くて、笑ってしまう。

 ひまりが体を離して、涙目で俺を見つめる。

 可愛いなぁ、なんて思っていると、ひまりは俺の頬に手を添えて、顔を近づけた。

 そのままやわらかい唇を俺の唇に押し付けた。


「……!」

「ありがとう……大好き」


 ……なんだ、これ。 生きててよかった。


「……俺も。 大好き」



 神様。

 俺のことを嫌いな神様。

 つまりこれは、この子をめちゃくちゃに愛していいってことだよね?



 
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