隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 暑い日でもないのに頬が変に熱を持つ。

 走ったわけでもないのに心臓が大きく脈を打つ。

 なぜか少し胸が苦しくて、

 なぜか、彼から目が離せない。



「エミリア様」

「!?」


 背後から突然名前を呼ばれて、大袈裟に肩を跳ねさせた。

 即座に振り向くと、白髪交じりの黒髪をオールバックにしてピシッと整えた背の高い丸眼鏡の紳士。


「マッ、マートン……!」


 執事のマートンが眉間に深い皺を寄せてわたしを見ていた。

 ちなみに、このいつも不機嫌に見える深い皺はマートンのトレードマークで、この皺がなくなるのは城の番犬であるドーベルマンのバロンと戯れているときだけ。


「ビックリしたー……心臓が飛んでいってしまうかと思った!」

「なにおかしなことをおっしゃってるんですか。今日はエミリア様のおそばに常に仕えるとお伝えしたはずですよ。わたしが少し目を離した隙に、何をしてらっしゃったんです?」


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