隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 なんか怖いし極力関わっちゃいけないって思ってるけど、好きか嫌いかと言われるとよくわからない。

 それを判断できるほど、酒々井優成のことを知らないし。

 ……前世でなにも知らず恋しちゃったことは、棚に上げておく。


「ふーん。まぁその、前世?の話は置いといて。 今日一日、隣の席から見た酒々井くんはどうだったの……あ、レアゲット~」


 ゲーム上でレアアイテムをゲットしたらしくちょっと嬉しそうにする美紗ちゃんに聞かれて、今日あったことを思い返してみる。


「……普通だった」

「普通?」

「うん」


 授業開始の鐘が鳴ったら席に座り、ノートに左手で持ったシャーペンを走らせる。

 たまにペンをクルンとさせてみたり、口元に手を置いて真面目に考え込んだり、俯いてあくびを逃がしてみたり。

 黙っているとクールに見えるけど、話すと口調がのんびりしているからか、ゆるく、ほがらかな空気が漂う。

 休み時間には必ずクラスの仲良しの男子に声をかけられ、和気あいあいとどこかへいなくなる。

 そんな普通の男の子にずっとビクビクしていた私は、いま疲労感が凄い。


 はー……と長いため息をついてみせると、どうしたの、と心配そうな目を寄せる美紗ちゃんの肩に頭をもたれさせる。

 うーん、なんだかバカらしくなってきたぞ。

 でも、あのおもりの件が怖すぎる。

 でもでも、明日も明後日もこんな感じで過ごさないといけないなんて……すっごく大変だ。

 うーん、もういいや!

 いったん考えるのをやめよう!

 多分殺されないだろうし。


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