隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 待合用の座席は三連のベンチがいくつか置いてあって、私はその中の出入り口に近いベンチの端に座った。

 一つあけて右隣には赤ちゃんを抱いたお母さんが座っている。

 ふと、お母さんの服にしがみついてる赤ちゃんと目が合った。

 かわいい。

 おしゃぶりを口につけた赤ちゃんは目を真ん丸にして、私のことを食い入るように見ている。

 あ。 にらめっこだね? 負けないぞ。

 じー……と赤ちゃんとひたすら見つめ合う。

 ふわふわほっぺにつぶらな瞳。

 まだ生えたてのふわふわな髪の毛。

 ギュッと握られた小さな手。


「あはっ」


 そのかわいさに負けて、私は噴きだした。


「負けたぁ~!にらめっこ強いねぇ」


 私が笑うと赤ちゃんもキャッキャと笑い出す。

 ちょっと困った顔で笑うお母さんに「可愛いですね!」と声をかけると「ふふ、ありがとう」と赤ちゃんとおんなじ可愛い笑顔を返してくれた。

 は~、素敵な親子だぁ。

 平和な放課後だな〜。


 ……なんて思った、その時だった。


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