隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
「っ、よしよし、大丈夫よ、大丈夫だからね~……っ」


 お母さんが小さく震える声でなだめるのを、強盗犯がギロリと睨みつけた。

 お母さんは必死になだめても、赤ちゃんの泣き声は激しさを増していく。

 強盗犯の目尻がヒクッと痙攣して嫌な予感がした。


 ……そのときだった。


 ウィーン、と自動ドアが呑気に開いた。

 背の高い男の子がくぁ、とあくびしながら入ってくる。

 私と同じ城華学園高校の制服を着た男子だ。
 
 その人は、私の知ってる人だった。


「酒々井くん……?」


 自動ドアを抜けた酒々井くんは、強盗犯と行内の様子を見てピタリ、かたまる。

 みんなが酒々井くんに注目している。


「……ん?」


 まの抜けた声を漏らした酒々井くんに、強盗犯がカウンターから降りて銃口を向けた。


「よお兄ちゃん。運が悪かったなぁ」


 酒々井くんは両手をあげて、
 

「……わー」


 平和な悲鳴をあげた。



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