隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 頭を抱えていると、外からパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 行内にピリッと緊張が走る。

 もっと金を詰めろと行員に詰め寄っていた強盗犯はカウンターから出た。

 パトカーは確実にこちらに近付いてきている。


「ちくしょう‼ 誰だ通報したのは‼ ああ!?」


 銃を振りまわして叫び散らかす強盗犯に、落ち着いていた赤ちゃんが再び泣き始めた。

 そしてパトカーのサイレンがすぐそこで止み、拡声器の声がする。


『こちらは○○署だ。立てこもっている強盗犯に次ぐ。出入り口は完全に封鎖した。これ以上は何をしても意味がない。大人しく武器を置いて出て来なさい』



「くそぉ!」



 強盗犯が近くにあった整列用のポールを、勢いよく蹴り倒した。



「くそ、くそ!!すべて台無しだ!クソが!!」



 そこでまた赤ちゃんの泣き声がひときわ大きくなる。


「っあー!!さっきからうるせぇんだよ!とっとと黙らせろ!!」


 錯乱状態になった強盗犯は、懸命に赤ちゃんをなだめるお母さんに銃口を向けた。


「ひっ……、」


 恐怖に顔を歪ませたお母さんが、赤ちゃんを抱きしめて縮こまった。


「だ、ダメ……!!」


 私は咄嗟に椅子の後ろから飛び出して、親子の前に体を滑り込ませた。

 一瞬ひるんだ強盗犯は、すぐに持ち直して私に銃口を向ける。


「なんだよ! 撃ち殺されてぇのか! あぁ!?」

「っ、」
 

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