隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 怖い……!

 けど、この親子が銃を向けられてるところなんて、見てられない!


「もうこんなこと意味ないじゃないですかっ!やめましょう!」


 なだめるつもりで言ったその言葉を放ったとき、明らかに強盗犯の空気が変わったのがわかった。



「……ああ?」


 その血走った目と目があって、全身にぞわっと寒気が走る。


「お前、いま俺に指図したか……?」


 強盗犯が、私に歩み寄る。


「っ……、へ……?」


 もしかして私、地雷、踏んじゃいましたか?


 強盗犯が溜め込んでいた鬱憤を晴らすように通り道にあった立て看板を蹴り付けて、厚めのプラスチックが割れる大きな音がした。


 その圧に腰が抜けた私は、ペタンと尻餅をつく。


「俺はなぁ」


 私の目の前まで来た強盗犯は、わなわなと震えている。


「お前みたいな生意気な女が何よりも嫌いなんだよ!!」


 鼓膜を破りそうな怒声を上げた強盗犯は、拳銃を持つ大きな腕を振り上げた。

 殴られる……‼

 痛みを覚悟してギュッと目を閉じた。



 ゴツッと骨にぶつかる鈍い音がしたのは、私の体からじゃなかった。



「……!」



 いつの間にか私の前にいたその人が、小さく声を漏らす。



「っ、てー……」

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