隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。

 まさか、酒々井くんがかばってくれるなんて。

 信じられなくて、私はまばたきを繰り返す。


「し、すいく……」


 横を向く酒々井くんのこめかみが、青くなって血がにじんでいるのが見えた。


「! 血……! 血が……!」

「大丈夫大丈夫」


 酒々井くんは相変わらず呑気な声で私に言うと、強盗犯に顔を向ける。


「女の子殴んのは、駄目でしょ」


 目をカッと見開いた強盗犯のブチ切れる音が、こちらまで聞こえてくるようだった。


「クソがぁああ!!」


 高圧的な怒声を響かせた強盗犯は、怒りに任せて窓の方に向け発砲した。

 耳をつんざくような銃声、バリン!と窓が割れる音。

 みんなが悲鳴を呑みこんで体を縮こませる。


「俺に指図すんじゃねぇ!!」


 そして強盗犯は酒々井くんの胸倉をつかみ、銃を持った手で殴りつけた。

 また鈍い音がして、思わず口元をおさえる。
 
 殴られた酒々井くんは声を出すこともせず、動じない。


「っ、なんだその目は……!人見下すような目しやがって!ぶっ殺してやる!!」
 

 そして強盗犯は、何度も酒々井くんを殴りつけ始めた。

< 44 / 251 >

この作品をシェア

pagetop