隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
まさか、酒々井くんがかばってくれるなんて。
信じられなくて、私はまばたきを繰り返す。
「し、すいく……」
横を向く酒々井くんのこめかみが、青くなって血がにじんでいるのが見えた。
「! 血……! 血が……!」
「大丈夫大丈夫」
酒々井くんは相変わらず呑気な声で私に言うと、強盗犯に顔を向ける。
「女の子殴んのは、駄目でしょ」
目をカッと見開いた強盗犯のブチ切れる音が、こちらまで聞こえてくるようだった。
「クソがぁああ!!」
高圧的な怒声を響かせた強盗犯は、怒りに任せて窓の方に向け発砲した。
耳をつんざくような銃声、バリン!と窓が割れる音。
みんなが悲鳴を呑みこんで体を縮こませる。
「俺に指図すんじゃねぇ!!」
そして強盗犯は酒々井くんの胸倉をつかみ、銃を持った手で殴りつけた。
また鈍い音がして、思わず口元をおさえる。
殴られた酒々井くんは声を出すこともせず、動じない。
「っ、なんだその目は……!人見下すような目しやがって!ぶっ殺してやる!!」
そして強盗犯は、何度も酒々井くんを殴りつけ始めた。