隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
「とぼけないでください! 朝食を三人分召し上がられただけでなく、コソコソと給仕長にロールパンとソーセージ、さらにはデザートに甘いものまでねだって召し上がられたというのは本当ですか?」

「まあ、給仕長ったらおしゃべりさん」

「その似てないアリシア様の真似事もおやめください」

「えー?給仕室のみんなは似てるって言ってくれたけどなぁ」
 

 ちなみに、わたしは食べ物をねだったわけじゃない。見ていたらくれたのだ。


「エミリア様!」


 マートンがピシャリとわたしを呼んで、わたしは反射的にピシリと背筋を伸ばす。


「先日も散々申しあげましたよね。『あなたは食べ過ぎなので控えてください』と。 お父様から奇跡的に賜った太りにくい体質のおかげで幸い見苦しいお姿にはなられていませんが、いくらなんでも毎日成人男性以上にたくさん召し上がられてはお体に負担がかかります!」
 

 それからマートンは話を脱線させていって、高尚な淑女たるもの~とか、常にこの国をおさめるステヴナン家として~とか、耳にタコができるほど聞いてきた言葉たちをつらつら浴びせていく。

 マートンがそうなるのも無理はない。

 わたしはあと一年もすれば和平のため隣国へお嫁に行く身なのだから。

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