隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 40代ぐらいの人のよさそうなサラリーマン。

 ターゲットはおっさんに背を向けて立つ、眼鏡をかけたおとなしそうな女子高生だ。

 おっさんの手元は俺の位置からは人が邪魔して見えないけど、目つきや息遣いでわかる。

 背中側から、偶然を装って触ろうとしている。


 はー……めんどくせぇー……。


 俺は手を伸ばして、おっさんの肩をトントンと叩いた。

 おっさんはビクッと肩を跳ねさせて俺を見る。


「っ、?」

「……」


 困惑するおっさんを、俺はなにも言わずにただ見つめる。


「……っ」


 俺が言わんとすることを察したのか、逃げるように目を逸らしたおっさんは、冷汗をだらだらと流しながら両手とも吊革につかまって、俯いた。
 
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