隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
第二章『愛とは』
城華学園高校サッカー部
「昨日の強盗事件、この学校の男子生徒が犯人捕まえたらしいよ」
そんな声がどこからか聞こえたのは、駅からの通学路が強盗事件のニュースで持ち切りの快晴の朝だった。
思いっきりその現場にいた張本人であるわたしは、他の生徒に紛れてひとりのんびり歩きながら、くぁ、とあくびを漏らす。
昨日は大変な放課後だった。
酒々井くんにハニトラをかけられて揶揄われた後、わたしは戻った銀行で事情聴取を受けた。 警察の人に強盗犯を倒した男の子は誰かと散々聞かれたけど、わからないの一点張りでやり過ごすのは簡単なことではなく。
防犯カメラは犯人によって壊されていたし、現場にいた人たちも城華学園の制服を着たイケメンだって特徴ぐらいしかおぼえていなかったようで。
警察の人は犯人をつかまえた彼を表彰したいと言っていたけど、犯人でもないのに捜索するほど暇でもないみたいだった。
つまり、噂の〝この学校の男子生徒〟が酒々井優成だって知ってるのは、たぶん……わたしだけ。