隣の席の●し屋くんと、世界一尊い恋をする。
 ようやくマートンのお説教が終わってシュンとするふりをしながら、もう一度彼の姿を探してみる。

 遠目に、音楽にのせて楽しそうに踊る人たちの隙間でベリーを頬張ろうとしていた彼を見つけた。

 そしてまた、目が合う。

 ……あ、また

 ドクン、ドクン、心臓が忙しなく走る。

 彼の目に捉えられると、金縛りにあったみたいに体がいうことを聞かなくなってしまう。

 彼は私と目を合わせたまま口に含んだベリーを咀嚼して、少しだけ口角をあげた。


「……!」


 笑った……!


 そこへ、私たちの視線を遮るように私の前に影が落ちた。


「エミリア様。私と一曲踊っていただけませんか」


 貴族のハーティスが私の前に片膝をつき手を差し伸べた。

 『彼』の不意打ち笑顔の衝撃で、私の心臓はまだドキドキと高鳴っている。


「……ええ、喜んで」


 私はマートンに教わった淑女らしい笑顔で快諾して、ハーティスの手を取った。

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