もう遅いよ...

side紫乃羽

『もしもし?』

「あのねっ!」



電話口から聞こえる佐和くんの声は優しくて、すごく泣きたくなってしまった。



「佐和くっ…!」

『えっ、しぃちゃん?!』

「私、ね、お母さんがっ、海外転勤することになって…マキちゃん家に行かないと、海外に行くことになっちゃって…お母さんの夢だったし…でも…っ!」



話のまとまらない私の言葉を一つずつ優しく救いとってくれる佐和くん。

涙でぐちゃぐちゃで、きっと、私が何を言っているかなんて、わかんないはずなのに…

こんな時でも優しいから、余計に辛くなった。
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