職場内不倫をしている夫の、職場のイベントに手違いで呼ばれたので、素知らぬ顔で子連れ参加し、気まずい思いをさせてやりましょう。
「故障の原因は、肩にあったようですわ。これできっと、元のように剣を持てるでしょう。」
「ありがとうございます……!!」

 涙ながらにお礼を言われ、悪い気は致しません。彼女自身は、悪い方ではないようですから。
 同僚の皆さまも、良かった良かったと、喜んでおられます。


「普段は、治療院でお仕事を?」

「いえ、治療の仕事はしていないのです。」
「それは勿体ない。せっかくの希少スキルなのに。」

 皆さまが、ウンウンと頷かれた今が、タイミングですね。


 私は、見た目だけなら清らか、と言われる笑みをそっと浮かべて、答えました。


「良いんです。家で、主人が安らげる空間を用意することも、大切なことですから。結婚のときの約束で――。」

「――??」

「主人が『互いに家庭を第一に(・・・・・・・)しよう』と希望したものですから。
 私も約束したんですの。仕事はやめて家庭を第一に(・・・・・・)、しっかり家を守っていくと。」

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