クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
悲しい……。
さすがクズ男は、どんな時もクズだ。
だけど、いつも以上によく回る口、イライラした態度。
もしかして先輩って体の調子が悪いんじゃなく、機嫌が悪い?
「先輩、どうかしましたか?」
「……なにが?」
「いや、なんかいつもと違うから」
「……」
すると先輩は「そうだね」と。
ポツリと呟いて、私に近づいた。
わぁ、黒いパンツに白いシャツの私服姿もステキ――なんて思っていると、パシッと手を掴まれる。
ん?
手を掴まれる?
城ケ崎先輩が私に触った!?
「しかもけっこうな強い力っ。いたたた!」
先輩は私を連れ立ち、グングンと廊下を進む。やってきたのはバスルーム。
ガシャンッ
荒っぽくバスルームの扉を閉めた先輩は、正面から私と向き合った。
いつもより磨きがかかっている冷徹な顔。やっぱり先輩、機嫌が悪そう。
いったい何に怒ってるの?
「さっきのセリフ、俺の方だから」