クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「こんな事でへばらないで。次は左だからね?」

「~っ!」


こんなの、もう限界――


ガクンッ

力が抜け、体がシャワー台にぶつかる。その瞬間レバーも動いてしまったようで、


キュ、シャアァァ


いきなりシャワーが出てくる。しかも、ヘッドは私の真上。

しまった、このままじゃ水が――!

冷水に備え、とっさに目をつむる。だけど、


「……あれ?」


覚悟していたのに、いっこうに濡れない私。

不思議に思って見上げると……すぐ上に、先輩の顔。しかも、薄茶色の髪の毛からポタポタと水滴が垂れている。


「先輩……?」


腰に回った大きな手。濡れない私。

なんと先輩は冷たいシャワーから守るように、私を抱きしめていた。


「どうして……、っ!」


ジワジワ先輩の服が湿っていく。背中に手を回すと、ビックリするくらい冷たかった。

いくら六月と言えど、このままじゃ風邪ひいちゃうよ!
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