クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「新しいスーツ、良く似合っておいでですよ。お店の方が好意で髪を乾かしてくださって良かったですね」
「半ば強制でしょ、あんなの。商品が濡れたら大変だし、上客に良くしたら売り上げ倍増だし。善意だけで俺を思うヤツなんて誰もいないよ」
そりゃそうかもしれないけど――と。冷たい言い方をする先輩に、男性は乾いた笑みをこぼす。
「金持ちの子って、どうしてグレるんですかね」
「小さい頃から世界を見るからね。良い事よりも、悪い事を多く吸収しちゃうんだよ。だから金持ちで純粋なヤツなんて、この世にいな、い……」
その時、先輩がピタリと止まる。そして「ある物」へ目をやった。
「へぇ、おやおや」
「……なに」