クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「どうやら〝いる〟みたいですね。金持ちだけど純粋な子が」


家を出る時に持ってきた婚約指輪。それがはまっている左手を見る先輩を、男性はニヤニヤした目で見つめた。


「びしょ濡れの件が凪緒様と関係しているのかは知りませんが、ほどほどにしてくださいよ? 響希様は、怒ると鬼のように怖いですから」

「……うるさい」


先輩が怒りをこめて、手を強く握る。すると中から「グシャリ」と音がした。


「ん? 何か持たれてますか?」

「……何でもない。ただのゴミだよ」


そう言って、ポケットの中におさめる先輩。そんな先輩を、男性はニヤニヤしながらミラー越しに眺めるのだった。



𑁍𓏸𓈒



「よし、出来た! いいお肉になったよー」


お昼からずっと煮込んで、現在午後七時。

煮込んだお肉が、舌で噛めるまで柔らかくなった。


「白だしで和風の味付けにしたけど、どうかなぁ」


もう何度も味見したけど、火を切った後に味が変わる事もあるから……。

どうか、このまま美味しい牛肉でいてくれますように!


ピンポーン

< 111 / 291 >

この作品をシェア

pagetop