クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

「ん? こんな時間にお客さん?」


インターホンの液晶を見る。すると、


『凪緒様、こんばんは。お届け物がありまして……ちょっとよろしいですか?』


長い髪を一つにくくり、猫っぽい顔をした男性。この人って、確か……。


「城ケ崎先輩の秘書さん?」

『そうです、安井です』

「安井さん! 今あけますね」


しばらく待つと「安井です」と玄関先で声がする。

何も思わず開けると……


「えぇ、城ケ崎先輩⁉」


安井さんの肩をかりている、脱力した先輩の姿。顔は下を向いて、足元はおぼつかない。


「まさかお酒……⁉」

「ではなく、どうやら風邪らしくて」

「え、」


風邪⁉

出て行く前は、あんなにピンピンだったのに!……いや。ピンピンっていうより、ビショビショか。


「安井さん、ここまでありがとうございました。先輩の自業自得なんです、あんな恰好で出て行ったから」

「……」

「安井さん?」


キョトンとした顔で私を見る安井さん。

かと思えば「寝室まで運びますね」と提案してくれた。良かった、ありがたい!
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