クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「はぁ、はぁ……」
「……このまま放置しておけません。先輩、覚悟してくださいね」
息荒く呼吸する先輩の口に、決まった錠数の薬を入れる。水は……私が飲んだ。
そして――
「んっ」
「……ごく、っくん、――っはぁ」
口移しなんて、先輩が知ったら怒りそうだけど……仕方ない。この方法しかなかったんだもん。
だけど水を飲んでくれたから良かった。薬が効けば、少しは楽になるよね?
「お大事にしてくださいね、先輩」
お盆を持って、部屋を退室する。いや、しようとした。
だけど――
パシッ
「!」
寝転んだままの先輩が、腕を伸ばして私を捕らえた。
掴まれた手がとっても熱い。先輩の高熱により、どんどん熱さが伝染する。私の頬が、赤く染まるほど――
「ねぇ、先輩」
「……」
「呼び止めてくれて嬉しいです……だけど、今は離しますよ?」
「スー……」
先輩は、目を瞑ったまま。きっと寝ぼけてるんだね。
そろりと先輩の手を離す。すると、先輩の口がパクパク動いてる事に気付いた。
ん? なにか喋ってるのかな?
耳を近づけると……