クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「ぎゅう、にく……」
「へ?」
息荒く、何を言うかと思えば。先輩が言ったのは「牛肉」。
さっきムリヤリ食べさせたこと、根に持ってる……⁉
「忘れろって……言った、のに」
「え……」
牛肉を忘れろって……なに? あ、もしかして。
ペットボトルを私に投げたことを申し訳ないと思ってるけど、素直に謝れないから、記憶から消してなかった事にしろって事?
「やり方が卑怯ですね先輩。私、忘れませんから。正々堂々と謝ってくれるまで待ってます。だから……早く元気になってくださいね」
「スー……」
「って、聞こえてるわけないか。お大事に」
パタン
「は~……」
なんか、色々あった部屋だった。
色んな事が起こった時間だった。
今日の事を、先輩は覚えてないだろうな。風邪が治ったら、いつも通りクズで冷徹な先輩に戻ってるだろうな。
さっきの素直な先輩は、しょせん甘い夢。
だけど私……、嬉しいの。
「先輩は熱のとき素直になる……か。新情報ゲットしちゃったっ」