クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です

へへへと、笑った後。寝室の前から離れる。

そうだ。今のあいだに、お買い物に行こうかな。うん、そうしよう!


――と、忙しくなく動く私。
だからこそ、気づかなかった。


「〝新情報ゲット〟か……。おめでたいやつ」


本当は起きていた先輩が、私が部屋の前から去った音を聞いて目を開ける。

その時、車の中で安井さんと話した会話を思い出した。


――善意だけで俺を思うヤツなんて誰もいないよ

――金持ちで純粋なヤツなんて、この世にいない


スッ


天井に向かって左手を上げる。その時、きらりと光ったのは婚約指輪。


「……」


先輩はおもむろに、近くに掛けてあったスーツに手を伸ばす。目的はポケットの中。

その中を探ると、スーツのボタンよりも小さい「何か」が出て来た。
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